ここが旅の主な目的地として挙がることは稀なのではなかろうか。今回紹介する街はラウターブルネン(Lauterbrunen)、本当にここなのかは別として「写真で見たことがある」と一瞬で感じてしまうであろう、街の風景自体は極めて印象的だ。見てそれと分かる長年の氷河の浸食でつくられた氷河谷、その地形だから存在する垂直に落ちる名瀑。大きな自然に溶け込む落ち着きある美しい街。
周りの環境が街の立地を物語っている通り、スイスアルプスの峡谷に位置する。南方は名峰に閉ざされ道は続かない。ここへのアクセスは北方からのみ、ベルナーオーバーランドのインターラーケン(Interlaken)が玄関口的な街となるだろう。アクセスも一苦労なエリアではあるが、スイスアルプスの旅となると近くにはユングフラウ三山が鎮座する有名なエリアでもある。ユングフラウ三山へ向かう主なアプローチはグリンデルワルト(Grindelwald)がベースとなる為、ここウルターブルネンは通らない。しかし、折角ここまで来たなら短時間で良いから立ち寄りたい・立ち寄るべき街だ。その価値がこの街にはある。
既述ユングフラウに向かうオプションのルートとして、ヴェンゲン(Wengen)からのゴンドラや、インターラーケンからウルターブルネンを経由する登山鉄道もある。車であればもっと気軽だ。また、ユングフラウを登るのではなく一望する目的があれば、ウルターブルネンの南奥シルトホルン(Schilthorn)からの眺めは満足度が高いので、ここに向かう際に立ち寄るのも良い。
歴史と自然の力を目の当たりに出来る氷河谷
界隈のアルプスを訪れる場合、インターラーケンを過ぎた頃からそれは視界の違和感として感じる。平地と高地を分ける極端な落差。氷河浸食による氷河谷(別名U字谷)だ。氷河谷自体は他でもあるだろうが、ここは立地や環境が重なったのであろう、自然の力が一際美しく表現され、私の様な素人でも見て感じて分かる。
ここまでのU字の地形は、グリンデルワルト方面では見られない。つまり、ウルターブルネン方面に南下しないと見られない。その地形美は一見の価値アリだ。
丁度ウルターブルネンが境なのだろう、岩壁が強く切り立ってくるのはこの街以南だ。北側は平地を挟む山々がまだ少し緩やかだ。インターラーケンからここまで南下してきた登山電車もここで南下を諦め、周囲の緩やかな山を刻んで登る進路を取る(写真右下、180°進路を変える登山電車の線路が見える)ことからも、この先の谷の深さが想像される。
氷河谷がつくる名瀑
氷河谷だけでも来た甲斐があるのだが、この氷河谷は更なる演出をしてくれる。非浸食側の高台よりアルプスより流れる川が谷に流れ込んで来るのだが、この谷に限って表現を正せば流れ”落ちて”来る。岩壁が垂直に切り立っているので滝になっているのだ。
街の徒歩圏の好立地に有名な滝(シュタウプバッハ)がある。調べたところ、落差300mにもなるとか。しかもここは、滝の裏に行くことが出来る。滝壺の横から裏に回るトンネルを潜るが、ちょっとしたアトラクション気分。水温の影響か、冷える。
裏から洞窟様の登り坂をしばらく登る。外が見えたかと思うともう滝の裏。滝水の壁、先にはウルターブルネンの街を眼下に望む。滝水による濡れっぷりは自分の立ち位置で調整可(濡れないことはありません)。
絵に描いたような街の美しさに溜息
「写真で見たことがある」様な街は、正にここに存在した。そして言わずもがな、写真からの想像以上に雄大・絶景であった。ここの空気に包まれながら歩いているだけで満たされる、ここの景色を眺めているだけで時間が過ごせる。時間が許すならちょっと一足、是非寄り道をおススメできる街だ。
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